第2章 とても大事な【根の働き】
植物の栽培には用土が大切ですが、その植物の根がどんな性質を持っているのかをか知ったうえでなければ、用土を選ぶことはできません。植物一家の大黒柱は<根>に他ならないのです。
1.重要な器官は根に集中しています。
植物の茎、葉、花などを上半身とすると、根は下半身です。根の役目は、まず上半身である茎、葉を倒れないようにがっちり支えることです。ヒトの体で言えば足腰に相当します。
そして、さらに大切な役目は、栄養・水分を吸収して上半身に送ることです。土に溶けている肥料成分から、植物体が利用できる成分を必要分だけ選んで吸収します。つまり、根は食べ物を取り入れる口であり、消化する胃腸でもあるのです。これだけ大切な器官が集中している根が元気なら、植物は健康体だと言えます。
2.働くのは若い根と根毛です。
根が地上部に養分・水分を送るといっても、根の全ての部分がその仕事に関わるわけではありません。成熟した太い根は、植物体を支えているだけで、ほとんで養・水分を吸収する働きはしません。
主役は、若い根と根毛です。若い根の先端は、表皮の細胞の一部が細長い管のように伸びています。これが根毛で、土粒から活発に養分・水分を吸収します。根は根毛を生やすことでその表面積を数十倍にし、効率的な養分・水分の吸収システムを作っています。
3.根は空気をたくさん吸って、働くエネルギーを生みます。
根が養分・水分を吸収するには、エネルギーが必要です。エネルギーを生み出すため、植物はまず光合成で葉がつくったでんぷんを根に送ります。根は、吸い込んだ酸素とでんぷんを結合させてエネルギーとします。
根に欠かせない3要素は「空気」「水」「養分」ですが、中でも空気が不足すると、根は酸素欠乏で窒息し、やがて根腐れを起こします。
4.根は猛スピードで伸びます。
野生の動物は歩き回って餌をあさります。テリトリーが広いほど、餌にありつく可能性は高いといえるでしょう。
植物は歩き回って栄養をとることが出来ないので、根を伸ばして養分・水分を吸収します。畑で育ったコムギの根は深さ120cm、幅60cmに、またトマトは畑に定植後約2ヶ月で深さ80cm、幅110cmぐらいの広がりになります。
草花類もほぼ同じと考えられますから、根の生長のスピードは驚くべきものです。植物の生長は根が中心で、根が伸びるから地上部が育つのです。
5.根はバックせず全速前進します。
養分・水分を吸収する主要部は根の先端付近にあるので、根は前に前に伸びようとし後戻りしません。鉢植えの根は放射状に直進し、鉢壁にぶつかると分枝して壁面に網目状に張ります。
このように根は猪突猛進のイノシシ型ですから、小苗の鉢上げの際には、小鉢→中鉢→大鉢と徐々に鉢を大きくします。すぐ大鉢に植えると、根は分枝せず、荒く放射状に伸びて鉢壁の部分を巻いているだけとなります。これでは地上部の育成は不良になります。