土を知る・植物を育てる

第4章 とても大事な【土と根の関係】

■土は、亭主(根)の好きなマイホームである。

1.根が安心して暮らせる住まいとは・・・

鉢植えの植物にとって土とは何でしょうか。鉢という壁に囲まれて、一家の主人である根が快適に暮らせる住まいだといえます。

土の役目はまず第一に、植物を倒れないように支えることです。根がいくらふんばっても、しっかりつかまる土粒がなければ、地上部を支えられません。そして、植物に不可欠な3条件である水分・養分・(肥料)・空気を根に供給します。3条件をいつも適切に供給する土は、根にとって居心地のよい住まいです。さらに、良い土は夏や冬でも温度変化が少なく、ふとんのように根をまもります。

2.良い土はすばらしい超能力で根を事故から守ります。

良い土は緩衝能という性質を備えています。緩衝能とは、有害物質が土に流入したり、肥料の施しすぎや肥料不足が生じたり、化成肥料の連用で土の酸性化が進んだりしたとき、それらの傷害をやわらげ、急激なショックが及ばないように根を保護する作用のことです。

根はいろいろな事故にあう可能性がありますが、土のもつこの超能力のおかげで、事故の確率はずいぶん低くなっています。

■理想的な住まいの条件を考えてみましょう

1.空気と水の通りがよい土

根は酸素呼吸をして養・水分を吸収しています。鉢植えの植物は狭い土の中で、無数に根を張り巡らせているので、通気性がよいことが何よりも大切な条件です。

通気性が良ければ、根が呼吸して排出した炭酸ガスなどの不要なガスは、大気中に飛散。します。さらに排水性もよく、水やりのたびに古い空気と新しい空気の全面的な入れ替えが行われると理想的です。

もし、排水性が悪いと、根は過湿で酸素不足二なり、根腐れをおこすでしょう。しかし、空気と水は土粒間のすき間に共存しているので、空気の通りやすい土は、すなわち排水性の良い土でもあります。

そのため、排水性の土をつくるために、軽石(パミス・日向ぼら土など)を主につかって土作りを行います。

2.そのうえ水もちの良い土

良い土の条件は、通気性、排水性と保水性を両立させていることです。しかし、狭い鉢内では原土だけだと空気不足になったり、空気はあっても水もちが悪くなりがちです。

通気性と保水性は、あちらを立てればこちらが立たず、の関係なのです。2つを両立させるには、原土に有機物(腐葉土・ピートモスなど)か人工砂礫(バーミキューライト・パーライトなど)を混ぜ、その物理性を改善することです。

3.根が好きなのは、粉より団子

一つ一つの土の粒は非常に微細で、単粒(みじん)と呼ばれています。単粒が集まった単粒土は、土粒のすき間が小さいためにすぐ水浸しになり、根詰まり状態になります。

しかし、単粒がくっついて団粒構造になった土は、根にとって理想的な住まいです。団粒の隙間は大きいので空気と水が通りやすく、団粒の表面にも内部にも養・水分をたっぷり蓄えているので、保水性と保肥力にも富む土になります。普通の土(庭土・田土など)でも団粒土なら根にとって良いのですが、やはり1・2で説明したように、軽石・有機物・人工砂礫などを混入することによって団粒構造に変えることができます。

4.鉢の底にゴロ石を敷きましょう。

プランターや素焼き鉢に植え込む時、主に鉢底に網類を置いて土を混入していると思います。しかし灌水などでどうしても土は締まってきます。そのため水捌けが悪くなり、通気性・排水性に悪影響を及ぼし植物の生育にも影響してきます。これらを改善するには、土をプランターや素焼き鉢に入れる前に、ゴロ石(日向土・ボラ土・パミスなど)の大粒をひとさし指の第二関節ぐらいの高さに鉢底に敷く事によって、これらの問題が解消されます。こうすると根の発育が良くなって鉢全体に回るようになります。

5.腐葉土は根にとって百薬の長

腐葉土は通気性・保水性がよく、原土の物理性を改善する直接効果があります。また、分解が進むにつれて糊に似たものをつくりだし、土の単位をくっつけて団粒化を促進します。この間接効果は持続的で、団粒土が水やりなどで単粒化するのを防ぎます。

腐葉土から生まれる腐植は、土の中に含まれる養分と、自身が含む微量要素を必要に応じて放出します。さらに、土の緩衝能も高めます。

根にとって腐葉土は、この上ない薬です。

6. 異物が混入したり、不潔ではダメです。

庭・花壇の土や使い古しの鉢土を利用する場合には、植物に有害な病原菌・病害虫・雑草のタネなどが混ざっていることがあります。この場合には、消毒して清潔にしてから使うことです。ガラスやアスファルトの片、油分、化学物質など異物の混入にも注意したいものです。

7. 土壌酸度は、高すぎず、低すぎず。

土壌酸度とは、土が酸性かアルカリ性かということで、PH(ペーハー)という単位で表します。PH7.0以下が酸性、それ以上がアルカリ性とします。

多くの植物の生育に問題ないのは、弱酸性から中性の土(PH5.5〜7)とされています。しかし、栽培に使った土や畑土などは、植物に不都合なほど酸性化が進んでいることがあるのです。土に含まれる石灰・苦土・カリなどが、雨や水やりで流されたり、窒素肥料を多く施すと、土は酸性化していきます。逆にアルカリ性が強くなった場合も、微量要素の欠乏などの障害があらわれます。鉢植え用土の場合、土壌酸度を調べ、必要に応じて苦土石灰か消石灰を与えます。そして、石灰だけに頼らず、必ず有機物(腐葉土・バーク堆肥など)を同時に施すことが大切です。

有機物を施す事によって、酸性化で定価した土の緩衝能や、微生物の活性化を回復させることができます。

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